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米国は中東から逃げ出す

もう「警察官」を務め切れない

2013年7月号特別リポート

「及び腰」「引っ込み思案」「優柔不断」と単純に考えるのは誤りだろう。オバマ大統領は重い御輿をようやく上げ、内戦が激化するシリアの反体制派に武器支援すると六月十三日に発表した。それまでに大統領はいかに逡巡したか。支援の内容も小火器、弾薬など申し訳程度にとどまる。何故なら、のめり込んだら底のない沼に足を入れるようなもので、けじめが不明だからだ。二〇〇三年のイラク攻撃に周辺諸国は一定の理解を持っていたが、シリア問題には国境を接している国々が自国の安全のためにみな身構えている。シリアを支持するのは、イラン、レバノンの武装勢力ヒズボラ、ロシアだ。米国は国内事情で政権自体が「内向き」になっている。軍事費に大ナタが振るわれているのは米国だけでなく欧州諸国も同様だろう。

 しかし、大統領が意識しているかどうかは別として、介入をためらう最大の理由は中東全体で果たしてきた警察官の役割の時代が去りつつある事実だ。この地域を現在のように複雑怪奇にした原因の一つは英国、フランス、ロシアの三帝国主義国が密約でオスマン帝国を分割した一九一六年のサイクス・ピコ協定で、いまのシリア、イラク、・・・