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経済

《企業研究 》ノバルティスファーマ

日本の医療費を貪る「外敵」

2013年9月号

「医者からは高血圧症治療薬の中では最も優れているものの一つ、と説明されてきた。でたらめな販促や宣伝に利用されて処方されてきたのだとしたら、まさに許し難い裏切り行為だ」

 降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)を使った臨床試験データの不正操作疑惑が明るみに出た製薬大手のノバルティスファーマ。数年前からそのディオバンを服用し続けているという患者の一人はこう怒りをぶつける。

 疑惑が表面化するきっかけとなったのは昨年四月、世界的権威があるとされる英国医学誌『ランセット』に掲載された一本の論文だ。二〇〇七年から〇九年にかけて発表された「降圧の他にも脳卒中や心筋梗塞を防ぐのに大きな効果がある」と結論づけた京都府立医科大学や東京慈恵会医科大学、千葉大学提出のディオバンの臨床試験結果に関し、京都大学医学部附属病院の由井芳樹医師が「奇妙に映る」として統計学的な疑問を投げかけたのだ。そして今年二月には欧州心臓病学会が「いくつかのデータに致命的な問題が存在していた」として、四月までに同学会の医学誌『ヨーロピアン・ハートジャーナル』に掲載された京都府立・・・