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経済

《クローズ・アップ》遠藤信博(NEC社長)

「IT企業としての自殺」を主導

2013年9月号

 大手エレクトロニクスメーカーのトップの名前を挙げれば、ソニーの平井一夫氏、パナソニックの津賀一宏氏、シャープの高橋興三氏などは業績低迷や社長人事に関する報道で、否応なく知名度が上がった。情報通信系でも富士通の山本正已氏はそれなりに名を知られている。だが、「NECの社長は?」と尋ねられて即答できるビジネスマンはNEC社員くらいだろう。かつて小林宏治氏、関本忠弘氏など経団連会長にも擬せられるほどの大物経営者を輩出した企業の面影はもはやNECにはない。

 遠藤信博NEC社長の存在感が薄いのは本人が理由とは言いきれない。NEC自体が地盤沈下を続け、もはや有力IT企業の一角からはずれようとしているからだ。NECの衰退を改めてはっきり示したのが、スマートフォンからの撤退だ。七月三十一日付で携帯電話などを開発、生産する子会社NECカシオモバイルコミュニケーションズがスマホの開発を中止、現行モデルをもって生産から撤退することを発表した。

 NECカシオはNEC、カシオ、日立製作所の携帯電話事業を統合したものだが、NECが七〇%超の株式を握り、実質的にNEC・・・