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政治

ノーベル経済学者を 「悪用」した官邸

「消費増税先送り」官製報道の大噓

2016年4月号

 読売新聞は三月十八日付朝刊トップで「消費増税先送り検討 首相 経済減速に配慮 衆参同日選も視野」と大々的に報じ、解散風を吹かせた。その前さばきの役割を果たしたのが、三月一日に設置したばかりの「国際金融経済分析会合」だ。五月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に備え、安倍晋三首相らが有識者と経済分野で意見交換するのが目的で、数回開く。
 十六日午前に首相官邸で開かれた初会合の講師として招かれたのは、二〇〇一年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授。「一七年四月の消費税率一〇%への引き上げを見送るよう」提言し、首相は「大変良い示唆をもらった」と応じたとされる。
 冒頭の読売新聞だけでなく、主要メディアはそろって、一四年に首相が「景気点検会合」を設置し、同年十一月に一年半の増税延期を決め、衆院を解散したという「前例」をひき、今回のスティグリッツ教授の発言はその布石だというシナリオを報じた。
 これには当のスティグリッツ教授自身が、びっくり仰天だろう。そもそも彼の来日目的は、首相官邸で講義することではなく、同じ三月十六日の午後に・・・