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経済

《クローズ・アップ》 野島 誠(JR北海道社長)

「人命軽視」を認めた鉄道トップ

2013年10月号


「先延ばししているうちに失念してしまった」。誰しも日常生活ではこんな言い訳をすることもあるだろう。だが、大企業、しかも人の命を預かる輸送業のトップがこの言葉を吐いてしまえば、その企業は事業からの退場を命じられるべきだろう。企業にとってレッドカードを受ける発言だ。

 発言の主はJR北海道の野島誠社長。函館本線大沼駅構内で起きた貨物列車の脱線事故の原因を探っていくうちに発覚したのが、レールの異常を知りながら適切な処置をとっていなかったという驚愕の事実だ。しかも調べてみれば同じように問題がありながら放置していたのが二百六十七カ所もあった。ここまでくれば、「失念」ではないだろう。「意図的な放置」であり、事故が起きるリスクを知りながら何も対応しなかった「人命の軽視」でしかない。貨物列車の脱線で済んだことは不幸中の幸いとしかいいようがない。

 JR北海道で事故が多発することにこれまでも多くの人が首をかしげてきた。二〇一一年五月に石勝線で乗客七十八人が負傷する脱線炎上事故を起こし、厳しい批判を受けたが、その後も今年だけでも特急列車の発火事故が三・・・