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連載

日本の科学アラカルト22

国を挙げて取り組む「二次電池」研究の成果

2012年6月号

「日本のお家芸」

 そう呼ばれる、科学・技術分野がある。化学における有機合成やそれに伴う触媒開発や材料科学、半導体技術。製品分野ではかつてのテレビや、現在に連なる自動車など枚挙にいとまがない。
「電池」もまた、そうしたお家芸のひとつだった。「だった」と、過去形にしたのは言うまでもなく、現在の電池市場を牽引するリチウムイオン電池における二〇一一年の世界シェアで、韓国の後塵を拝したからだ。

 しかし、リチウムイオン電池はもちろん、この分野における敗北が決定したわけではない。日本のお家芸であった電池は、今後も社会を支える重要インフラであるのはもちろんのことながら、解決すべき課題も多い。つまりそこにはイノベーション、ブレークスルーという宝が眠っている。

 電池には、大きく分けて二種類ある。「化学電池」と「物理電池」だ。後者の代表的なものは太陽電池だ。一方、化学電池は、乾電池や車のバッテリーなどで、物質の化学反応により電流を発生させるものである。

 化学電池はいわゆる乾電池のように反応が基本的に不可・・・