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経済

KDDIを蝕む 深刻な「動脈硬化」

社員が待ち望む田中体制の終焉

2014年1月号

「なぜ提案をあげてこない! どうしてソフトバンクの動静が読めなかったんだ!」  十月末、東京都千代田区飯田橋のガーデンエアタワー三十四階にあるKDDIの経営戦略本部に怒声が響いた。声の主は同社の田中孝司社長。二十人前後で構成される経営戦略本部のメンバーは、背筋を伸ばした不動の体勢のまま、田中氏の叱責に無言で耐えるしかなかったという。  経営戦略本部は、各部署の精鋭を集めたエリート集団であり、M&A(企業の買収・合併)を担当する。社長室の隣に、秘書室などとともにオフィスを構えるKDDIの「奥の院」でもある。 「補佐役制度」という仕組み  ライバルのソフトバンクは十月、立て続けに海外大型M&Aを発表した。まず十月十五日、フィンランドのオンラインゲーム大手、スーパーセルを一千五百十五億円で買収すると発表、その四日後の十九日には約一千二百三十億円を投じ、携帯電話端末の卸売りなどを手掛ける米ブライトスターの買収も発表した。 「田中社長の逆鱗に触れたのは、このブライトスター買収らしい」と、ある社内関係者はささやく。アップルのiPhoneや・・・