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WORLD

中国は「アジアの覇者」たりえず

世界の顰蹙を買う大国の限界

2014年8月号特別リポート

 これだけ悪口を連日書かれる国は稀だろう。食品会社が使用期限切れの鶏肉を中国国内だけでなく、日本マクドナルドやファミリーマートに納入した事件一つ取ってみても国際的な道徳や法治の精神には合わない。ましてや、アジアの周辺諸国に対して軍事力を背景に領土、領海の現状変更を迫る強引な言動はようやく世界中の顰蹙を買い始めた。

 国際情勢の分析にかけては著名なシンガポールのキショール・マブバニ元国連大使は七月十八日付のインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(INYT)紙にこう書いている。「中国の経済力は一九八〇年には米国の十分の一以下だったが、三十年余りの間に世界の秩序を乱すことなく、世界ナンバー2にのし上がった。ところが、外部の変化を三十年間慎重に扱ってきたこの国は、三年前から高圧的な、ときには無謀な行為に出る国に突然変異した。この変化があったからこそ、西側のメディアは中国が拡張主義的な軍事大国になり、近隣諸国と世界に脅威を与えるようになったとのコンセンサスをますます強めているのだ」と。

 マブバニ氏は、中国指導部には強硬派と穏健派がいるのだから、後・・・