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連載

日本の科学アラカルト 51

次のノーベル賞有力候補 マルチフェロイック物質の研究

2014年11月号

 日本人による青色発光ダイオードの研究開発の成果が改めて世界から認められ大きな話題となった。日本人のノーベル物理学賞受賞は、二〇〇八年の小林誠、益川敏英両氏(南部陽一郎氏は受賞時米国籍)以来となる六件目。二〇〇〇年代に入ってからは化学賞受賞者のほうが多いが、遡れば湯川秀樹氏が一九四九年に日本人として初めて受賞したのは物理学賞だった。青色発光ダイオードの開発に携わった赤﨑勇、天野浩両氏と米国籍を取得した中村修二氏については、「ノーベル賞受賞は時間の問題」といわれてきた。  日本には、有力な物理学賞候補者がいる。今回の発表の直前である九月下旬、米情報会社トムソン・ロイターは今年の「引用栄誉賞」を発表した。同賞は発表された論文がどれくらい他の研究者によって引用されているかなどを基準に選ばれ、過去の受賞者の多くがノーベル賞を受賞しているため、「ノーベル賞予想」ともいわれる。今年は、世界中から二十七人が受賞したが、その中に理化学研究所創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長が含まれていた。東京大学大学院工学系研究科教授を併任している十倉氏の引用栄誉賞受賞は実は今回で二回目。〇二年から始・・・