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社会・文化

欺瞞に満ちた「水素社会元年」

政官財が画策する「巨大公共事業」

2015年1月号

 水素エネルギーに関連する業界が色めきだっている。政府が二〇一四年六月に取りまとめた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、地球温暖化対策としての切り札として「水素社会」をぶち上げ、一五年を「水素元年」と位置付けた。しかし、水素エネルギーのクリーンなイメージや、魅力的な経済性は「粉飾」されたものだ。 捏造されたイメージ  政府や企業が水素社会に前のめりになっているのは、補助金を軸とした巨大な公共事業と利権を生み出すために過ぎない。実際に、水素燃料の需要を創出して流通させるためには、燃料電池車の普及に始まり、水素ステーション、水素液化プラント、液化水素輸送網といったインフラの整備が必要となる。  もうひとつの次世代車候補である電気自動車が普及してもそれほど投資は生まない。発電所と送電線というインフラは既に全国で整備されている。急速充電設備も、一基あたりの設置コストはわずか五百万円程度なのだ。  その点、水素エネルギーのインフラはほとんど手付かずだ。新たな水素製造プラントを整備すれば全国で数千億円規模の投資が行われる。燃料電池車に水素を補給するための水・・・