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政治

テロ対策「やる気なし」の安倍政権

国民の安全より政権の「延命」を優先

2015年4月号

 国民を守るという啖呵も、積極的平和主義の美名も、まやかしだと思わせる茶番劇だった。  防衛大臣の中谷元が打ち出した、エボラ出血熱封じ込めの国際活動に加わるため陸上自衛隊をシエラレオネに派遣する構想が、総理大臣官邸の反対と足元の防衛省の抵抗で葬り去られたことである。「自衛隊による国際貢献」をアピールし損なっただけではない。将来、日本でBSL-4(バイオセーフティーレベル4=有効な治療法がなく、致死率が極めて高い病原体)の感染症の流行やBSL-4を使った生物兵器テロが起きた時に備え、訓練ではなく、「実戦」で経験値を上げる機会も逃したのだ。  中谷は二月十八日に総理大臣の安倍晋三を訪ねて構想を伝え、わずか四日後の二十二日には断念に追い込まれた。官邸が「欧米の部隊が引き揚げ始めた中で、今さら出ていく必要がない」と却下したのだ。世界保健機関(WHO)は三月十二日、今回のパンデミックによるリベリア、シエラレオネ、ギニアの西アフリカ三カ国の死者数が一万人を超えたと発表したが、流行のピークを越えたのは確かなようだ。最大で約二千八百人を展開した米軍も、四月末までに撤収する。ただ、自給自足で・・・