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経済

《クローズ・アップ》 ポール 与那嶺(日本IBM社長)

「法人存続」危機の中での外様登用

2015年5月号

「社長交代というより、支社長の異動みたいだな」。マーティン・イェッター氏(五十五歳)からポール 与那嶺氏(五十七歳)に社長が交代した日本IBMのトップ人事について、同社をよく知る経済人はこう評する。

 かつて米IBMグループの世界全体の利益の四分の一を稼ぎ、IBMにとって「世界で最も重要なアフィリエイト(子会社)」と言われた日本IBM。そのトップは財界でも重きをなした椎名武雄氏以降ですら北城恪太郎氏、大歳卓麻氏、橋本孝之氏まで三十七年超にわたって日本人が占めてきた。

 日本が高度成長し、日本市場が今の中国市場並みの存在感、将来性を持っていた時代背景と一九八〇年代に進んだメインフレーム(大型汎用コンピューター)からパソコンへの急激な転換、すなわちダウンサイジングへの技術対応を担ったのが日本IBMだったからだ。

 だが、バブル崩壊後の日本市場の低迷、電子機器のコモディティ化、インターネットの急激な普及のなかで、日本IBMは目標を見失い、力を弱めた。IBM本体が九三年のルイス・ガースナーのCEO就任で保守化した企業体質を変え、・・・