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社会・文化

理系人材の「倫理観」をどう養うか

三木哲也(電気通信大学企画調査室特任教授)

2015年11月号

―マンション傾斜問題や防振ゴムデータ改ざんなど日本の技術の信頼性を揺るがす不正が相次いでいます。

 三木 技術者、科学者を養成する我々も頭を悩ませている。さまざまな要因があるだろうが、理系人材の倫理観が劣化していることは否めない理由の一つだろう。日本の技術者は非常に高い倫理観をもって仕事をしてきた。これが、世界でも認められる安全で高品質なモノづくりの現場の根底を支えていた。だがいつしか、変節してしまい、さまざまな問題を引き起こしているのではないか。


―どのような原因が考えられるでしょう。

 三木 組織の余裕がなくなっていることは大きな原因だ。かつては企業の現場でも今ほど苛烈に効率やコスト最優先で追い立てられることはなかった。しかし現在は、開発スピードも増し、次から次へと業務をこなす必要がある。そこで安易に結果を出そうとして不正に手を染める技術者が出てしまう。また、終身雇用制が・・・