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経済

農林中金で膨張する「不良債権」

無謀な農業融資「急拡大」が原因

2017年8月号

 農林中央金庫が農業向け融資を急拡大しつつある。当たり前としか聞こえない話だが、実は大きな転換だ。農林中金の農業向け融資は融資残高約二十兆円の〇・一%と芥子粒並みで、自民党の小泉進次郎農林部会長が「農林中金不要論」を主張する根拠となっている。お取り潰しの危機に直面した農林中金は実績づくりのため闇雲に農業向け融資に走り始めた。だが、農業の資金ニーズが減っているなかでの無謀な新規融資は不良債権づくりそのもの。農林中金は自らの存在意義を示すために、財務基盤を毀損するという自爆経営に向かっている。

背景に“進次郎プレッシャー”

 農林中金は全国の農協(JA)や漁業協同組合などの金融事業の元締めにあたる組織で、農協が組合員から集めた貯金を預かり、運用する。全国約六百五十のJAと県単位で統括する信連、その上の農林中金を合わせた総体が「JAバンク」と呼ばれる。
 各地のJAは集めた貯金を組合員への貸し付けに回すのが協同組合組織の本来の姿だが、農業分野の資金ニーズは一九九〇年代から減少の一途・・・