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社会・文化

「中国のカラヤン」ロン・ユーの実力

類まれな「政治力」で世界的指揮者に

2015年12月号

 音楽ホールの建設ラッシュが続き、クラシック音楽熱が一向に冷めない中国。そんな中国で現在最も勢いのある指揮者は「ロン・ユー(余隆)」だろう。北京の中国フィルハーモニー管弦楽団、上海交響楽団、広州交響楽団という中国三大都市トップオーケストラの音楽監督を兼任。香港フィルの首席客演指揮者も務める。ニューヨーク・タイムズ紙が「中国のカラヤン」と評し、在米中国人演奏家が苦笑交じりに「ユーラヤン」とも呼ぶのも、至極当然だろう。 良くも悪くも「やり手」  ユーの音楽家としての最大の特徴は、良くも悪くも「やり手」であること。音楽的資質よりも、むしろマネジメント力の高さとそれを可能にする政治力において、現在、彼の右に出るものはいない。  それが最も顕著に表れたのが、中国フィルハーモニーの設立と育成だ。中国全土から腕達者を集めて二〇〇〇年暮れに突如出現した中国フィルだが、その歴史は古い。元来は中国放送交響楽団という名称のオーケストラだったが、ユーは国内最高額のギャラを提示してオーディションを実施。七割の楽団員を入れ替えてしまった。以降もメンバー交代を続け、現在では、ほぼ全て・・・