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経済

《クローズ・アップ》相川哲郎(三菱自動車社長)

重犯企業「事業終了」のおくり人

2016年5月号

 「またもや」。三菱自動車工業の燃費不正の発覚で多くの人が持った感想はこうだろう。リコール隠しなど大きなものだけで三菱自動車には過去二度の〝前科〟があるからだ。三回目の不正が会社の幕引きになりかねないことは、記者会見で不正を公表した相川哲郎社長(六十二歳)自身が十分に認識しているはずだ。
 二〇〇〇年に内部告発で発覚したリコール隠しは「パジェロ」「ランサー」など主力車種で二十三年間にわたり、のべ六十九万台分のリコールが社内で隠蔽されていた悪質なものだった。徹底解明と再発防止を誓ったはずだったが、トレーラーのタイヤ脱落事故により〇四年には不具合隠蔽が再び明らかになった。品質保証部門が部内限りで実行した不正であり、経営トップの社内掌握力の弱さ、社員の遵法意識の欠落が露わになった。
 二回の不正で同社は破綻の瀬戸際に立ったが、三菱重工業、三菱商事、東京三菱銀行(当時)などグループ企業が増資を引き受け、経営トップの派遣などで支えた。
 〇五年に三菱商事から送り込まれた益子修社長(現会長)は「電気自動車(EV)とSUV」という路線に転換したものの販売は低迷、かつては・・・