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経済

《短期連載》豊田家の研究

「錬金術装置」が生む巨万の富

2016年11月号

「本体はともかく、グループ主要各社の首脳級人事はいまも名誉会長が主体となって決めている。章男さんもほとんど口を出せない」
 豊田自動織機OB幹部の一人はこう漏らす。だが、どうやらコトは人事だけではなさそうだ。
 今年十月十二日、業務提携に向けた協議を開始することで合意したトヨタ自動車とスズキ。トヨタの東京本社で行われた記者会見に社長の章男とともに臨んだスズキ会長の鈴木修は、今回の合意に至った経緯について次のように述べ、名誉会長の関与を明らかにしたからだ。
「ITを中心に技術競争が急速に変化している。スズキは国内は軽自動車、海外はインド市場が中心で、伝統的な自動車技術を磨くだけでは将来、危うい。九月初めにこうした悩みを豊田章一郎名誉会長に聞いてもらって相談し、『(提携を)協議してみてもいいのでは』と言っていただいた」
 章男にスズキとの話が伝えられたのは合意会見から遡るわずか数日前のこと。章男によるとこの間、章一郎からは「鈴木会長に会ったよ」の一言だけだったという。
 鈴木はかねて周囲に章一郎のことを「兄のような存在」と語っている。ともに・・・