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WORLD

米中は勝者なき「貿易戦争」へ

自国第一主義同士の危うい「泥仕合」

2016年12月号

 来年一月に始動するドナルド・トランプ次期大統領の注目政策は、「中国との通商戦争」だ。
 トランプ氏は、「就任初日に中国を為替操作国と認定する」「中国産品に四五%の関税をかける」などの主張を繰り返し、それによって民主党基盤の中西部からごっそり白人労働者の票をさらった。米国有権者からの怒りの声を受け、政権初期から中国に攻勢をかけるのは間違いない。
 一方、中国側には今年の国際市場の不安定要因になった、国内の過剰生産問題や、構造改革が残っている上に、オバマ政権と激しくやり合った、サイバー犯罪、知的財産権の保護、産業スパイ、中国市場の開放など「中国の特異性」を示す諸問題が残っている。次期政権下での通商戦争が、かつての日米貿易摩擦よりも厳しい、長期間の激しいせめぎ合いになるのは必至だ。

サイバー攻撃と産業スパイで攻防

 トランプ次期政権の対中政策を占うためには、中国産業に職を奪われた労働者層の声に耳を傾けるだけでは十分ではない。ボストン、フロリダ、シリコンバレーといった、米国ハイテク産業の最前線を・・・