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意外とまとも「シリア和平協議」

「米国抜き」で前進する脆い枠組み

2017年2月号

カザフスタンの首都、アスタナ。十九世紀にコサック兵によって開拓された要衝を起源とする町は、独立後の新首都となり、故黒川紀章氏の都市計画に基づいた開発と建設の槌音が今も響いている。プーチン大統領がこのユーラシア大陸のど真ん中、極寒の地でシリアの和平を話し合うと電撃発表したのは、昨年十二月十六日、東京で行われた日露首脳会談後の記者会見の時だった。折しも最後まで抵抗したアレッポの反体制派陣営が陥落し、世界はプーチンの次の一手を待っていたので、日本国外では大きく扱われた。そしてその日からこの会議開催を前提とした政治的駆け引きが始まるのだが、その重要性を伝えた邦字メディアは筆者の知る限り皆無であった。
 シリア問題については、紛争当事者と関係各国が集うジュネーブ協議という枠組みがある。にもかかわらず、ロシアがこのタイミングで新たな会議を提案したのには、当然それ相応の思惑があった。そのことに多少なりとも思いを致せば、訪日したプーチン大統領の優先順位が北方領土問題どころではなかったことは容易に推測できたであろう。戦争の大勢が定まった今、ロシアは米国やEUの影響力を回避して、「勝者による和平・・・