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習近平とトランプの「裏取引」

米新政権に流れ込む「中国マネー」

2017年2月号

 大統領就任前から中国を刺激する発言を連発してきたドナルド・トランプ氏だが、米中関係は今後、悪化の一途をたどるのだろうか。表面上の対立の一方で、習近平政権は水面下でトランプ政権との接触をすでに始めている。中国にとって、ある程度の米国との対立は国内で支持基盤を固めるために欠かせない。だが、本格的な貿易戦争や軍事対決は回避したいところ—これが習氏の本音のようだ。
 裏交渉を任されたのは、外交部や党中央対外連絡部といった外交のプロではなく、習氏に近い太子党や浙江省の企業家らだ。トランプ周辺に対し資産買収案件を持ちかけるなど、おいしい話からスタートして、少しずつトランプ政権の中枢に食い込もうとしている。

大統領顧問の会社を買収

 トランプ大統領が就任した翌日の一月二十一日、中国の有力経済誌、「財新(電子版)」など複数のメディアが伝えたあるニュースが、米中の外交関係者の耳目を集めた。中国の複合企業、海航集団(HNAグループ)傘下のHNAキャピタルが、トランプ大統領の顧問、アンソニー・スカラムッチ氏・・・