三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

「農協改革」主役たちは総退場へ

守旧派が狙うJA全中「会長奪還」

2017年2月号

 一月十日に東京・ホテルニューオータニで開かれた日本生協連などの合同賀詞交歓会。奥野長衛・全国農業協同組合中央会(JA全中)会長はこの日が七十歳の誕生日。来賓として祝辞を述べるのもこれが最後だ。奥野会長は「昨年は(政府から農協改革という)きつい注文を付けられた」と、いきなり安倍政権への不満を口にした。会場で聞いた協同組合関係者は「やっぱり選挙か」とつぶやいた。
 解散・総選挙のことではない。JAグループの司令塔であるJA全中の会長選挙のことだ。会長の任期は三年だが、二〇一五年四月に、環太平洋経済連携協定(TPP)や農協改革をめぐって安倍政権と対立してきた萬歳章前会長が突然の辞意を表明、任期途中でバンザイしたため、奥野会長の任期は残余の二年しかなく、この八月で満了となる。しかも会長には「就任時七十歳未満」という定年があり、奥野会長に再任はない。
「任期二年」の制約を抱えていた奥野会長は改革を急いだ。東京・大手町のJAビルに乗り込むや、TPPや農協改革に批判的な幹部を更迭、安倍政権と歩調を合わせることでJAグループの利益の最大化を図る「対話路線」を訴えた。
 ・・・