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経済

トランプ「円高」の高まる足音

日本企業の「ぬるま湯」は続かない

2017年3月号

「もう市場はFRB(連邦準備制度理事会)の動向に関心がなくなっている。あの減税策なら絶対円安だ」
 旧知の為替アナリストがこう言った通りに相場は動いた。「常に円安派」の彼は昨年十月まで追い込まれていたが今は得意気だ。トランプ氏の当選によってドル売り円買いポジションが一気に解消され、米大統領選挙後から年末に向けて百十八円台まで円安ドル高が一気に進行したからだ。年明けからは百十二〜百十五円水準で調整が続くなか、「夢よ再び」と市場は一段の円安ドル高を期待している。前号で指摘した通り、米国の長期金利は上昇していくだろう。だが、これを理由に円安が進むと考えることは危険だ。トランプ「円高」に注意すべきである。

米国の「ナショナリズム」要因

「トランプ政策」のドル高要因を整理しよう。現政権の目玉政策はインフラ投資と減税だ。これが実行されていくならば、景気は浮揚し、長期金利は上昇していくことになり、ドル高要因となる。だが、「トランプフレーション(例えば不法移民排除による賃金上昇などインフレを起こしやすい政策内容)」・・・