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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》航空自衛隊「スクランブル」

東シナ海「空の国境」での日中の暗闘

2017年6月号

 トム・クルーズ主演の米映画「トップガン」が一世を風靡したのは冷戦末期の一九八六年のことだった。彼の扮する戦闘機パイロット、マーヴェリックはその高度な技術を認められて米海軍戦闘機兵器学校「トップガン」に入り、孤高の操縦士として宙を舞い、国家の盾となる。
 時は流れて三十年余り。日本の周辺空域では今、領空侵犯の恐れがある外国機に航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)する回数が急増し、二〇一六年度は過去最多の一千百六十八回に及んだ。このうち対中国が七割を占める。防衛省が公表しているのはこの乾いた数字だけで、その裏側に潜む日本のトップガンたちの暗闘と苦闘は全く知らされていない。
 国民の目に触れることもない天空で一体、いかなる攻防が繰り広げられているのだろうか。雲の幕間から見えたのは、命を賭したパイロット同士の一触即発の危機、そして二十四時間、三百六十五日絶え間なく続く熾烈な情報戦争だった。

「封印」された一触即発の事態

 マッハの音速で緊迫の大空へいざなう前に、スクランブルとは何か、改め・・・

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