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メキシコ首都「水戦争」の壮絶

凄まじき「地盤沈下」と社会不安

2017年7月号

 米国のドナルド・トランプ大統領が就任して以来、隣国メキシコは、「国境の壁」建設構想や不法移民の強制送還、さらに北米自由貿易協定(NAFTA)見直しと、厳しい攻勢にさらされている。
 六月にはトランプ大統領が、地球温暖化防止のための「パリ協定」離脱を表明し、メキシコでは怨嗟の声が爆発した。地球温暖化により、首都メキシコシティ(メキシコ市)が世界でも類例のない地盤沈下と水不足に苦しめられているからだ。

原因は地下水の過剰な汲み上げ

 人口二千万人の巨大都市圏の窮状を知るには、首都定番の観光地に行けばよい。国連教育科学文化機関(UNESCO)の世界遺産に指定されているメキシコ市中心部は、地盤沈下を物語る歴史的建造物ばかりである。
 新大陸最大のメトロポリタン大聖堂は、十六世紀にスペインが征服した直後から建設が始まり、十九世紀はじめに現在の形になった。
 だが、地盤沈下によって二十世紀後半には、鐘楼の傾きが目に見えて危険になり、一九七〇年代から断続的に補強工事が行われた。それでも各部の・・・