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絶好調のユニクロが進める 非情なリストラ計画

2010年1月号公開

 


 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開し、業績好調のファーストリテイリングで、トップ・柳井正氏の号令下、社員のリストラ準備が水面下で進んでいる。好調企業としての体面を気にしてか、進め方は慎重そのもの。表沙汰になりやすい希望退職の募集はしない。
 
 まず手始めに昨年秋、新しい人事評価システムを導入した。上司や同僚、部下など周囲の社員から仕事ぶりを評価される「360度評価」と呼ぶシステムで、能力の低い人材をあぶり出す狙いがある。大手企業がリストラの下準備で、よく用いる評価システムだ。リストラ候補者を洗い出し、中国など海外拠点への転勤を働きかけるといった計画が漏れ伝わる。当人にとって高いハードルを課し、自主退職を促す算段だ。また計画をスムーズに遂行する目的か、外部から人事コンサルタントを積極的に採用するなど、着々と外堀を埋めている。

 成果主義の徹底で有名な柳井氏とあって、このリストラ計画にも周囲の驚きは少ない。もっとも、人員整理に踏み込まざるを得ない低迷企業とは対照的に、絶好調の同社。雇用のあり方が社会問題にもなる中、このドライな施策に、「こんな今こそ、好調企業は雇用を支えるべき。企業の社会的責任感が欠けている」(労務専門家)といった批判もくすぶっている。


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