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社会・文化

「医療差別」で殺される独居老人

医師が明かす「手抜き治療」の実態

2017年9月号

いまや世界に比類ない高齢社会と化した日本。全人口に占める六十五歳以上の割合を示す高齢化率は二〇一五年十月現在、二六・七%と世界第二位のイタリア(二二・四%)を引き離す。一九九五年、日本の高齢化率は一四・六%で、この二十年でほぼ倍増した。この歪んだ人口構成は高齢者の社会的な孤立を加速させ、人知れず命の灯を消していく孤独死がネズミ算式に増加している。それが日本の津々浦々まで拡散している裏には、経営効率と利益優先で病人を選別する「手抜き治療」の蔓延が潜む。孤独な老人を適当に治療して死亡させたところで、訴えられやしない。身寄りがなければ、裁判沙汰に至らないのだから、真剣に命を救う努力などしないのだ。頼る人もいない独居者を見殺しにする「医療差別」を是正していく手だてはあるのか―。
 八〇年代、六十五歳以上の高齢者の七割が子どもと同居していたが、現在は四割程度に落ち込んだ。高齢男性の一割、女性の二割が独り暮らしである。高齢者にとって、最大の心配は健康問題、とりわけ独り暮らしの高齢者を脅かすのが孤独死だ。内閣府の調査によれば、孤独死を身近な問題と考えているのは、独居高齢者の半数近くに達する・・・