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経済

ホンダを零落させる「内憂外患」

遅すぎたリストラと「EV対応」

2017年11月号

 ホンダが十月四日、二〇二一年度をめどに埼玉県内の生産拠点を寄居工場へ集約し、狭山工場での自動車生産を終了すると発表した。狙いは国内余剰生産力の削減と電気自動車(EV)化への対応だ。しかし、ホンダの内情に詳しい専門紙記者は「いずれも遅すぎる」と酷評する。なぜか。ホンダの国内生産能力は年間約百六万台だが、一六年度の生産実績は約八十一万台と、稼働率は七六%に低迷している。ホンダは狭山工場の閉鎖で国内生産能力を八十一万台に削減するというが、それも四年後の話だ。
 ホンダの一六年度売上高営業利益率は六%と、売上規模が大きいトヨタ自動車の七・二%に比べても低く、固定費削減に向けた生産合理化は急務。現在二〇%を超える生産余力があり、国内市場の伸びは期待できない上に海外生産比率が高まるのは確実だ。「直ちに狭山を閉鎖しても問題はなかった」と、前出専門紙記者は指摘する。そもそもホンダが一九九〇年代初頭の経営危機後に安定成長を続けてきた背景には、国内生産力の抑制があった。〇八年には前年に着工した寄居工場の建設を凍結し、リーマン・ショックに伴う不況を乗り切った。
 一〇年に建設を再開した・・・