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連載

日本の科学アラカルト89

「量子コンピュータ時代」に通信の秘密を守る研究

2018年1月号

 眠っていた東京地検特捜部が、突如として捜査を連発。「復活の狼煙」となるかは不明だが、まず手をつけたのは経済産業省所管の補助金を詐取していたというスーパーコンピュータのベンチャーだ。当該企業は、省エネ性能に優れたスパコンを開発していたというが、科学の観点からいえば、早晩、時代遅れになる技術に過ぎない。
 量子コンピュータの実用化に向けた研究が進められていることが、既に多く報道されている。二〇一七年十二月六日、仁科記念財団は、武居弘樹・NTT物性科学基礎研究所上席特別研究員と安達千波矢・九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター長、甲元真人・元東京大学物性研究所准教授に仁科記念賞を授与した。同賞は原子物理学やその応用分野で優れた実績を残した研究者に贈られるものだが、武居氏は量子コンピュータの技術大規模化に関する研究が評価された。実は仁科記念賞はその前年にも、量子コンピュータに関連する研究を続ける高柳匡・京都大学教授を表彰している。まさに実用化前夜といった状況だが、そうなれば計算速度は一気にスパコンの数千倍になる。中には一億倍という試算もあり、スパコンは時代の遺物になりかね・・・