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タイ軍政に迫る「退陣」包囲網

タクシンと妹「日中歴訪」の意図

2018年3月号

 長期化するプラユット軍政への不満が高まるタイで、タクシン元首相、インラック前首相の兄妹が「帰国・政権奪取」に向け動き始めた。二月初め、本拠にしているロンドンから北京に入り、その後、東京、香港と数日ずつ滞在した。軍政に距離を置き、タクシン氏の帰国を切望していると言われるワチラロンコン国王の意向を受けているらしく、タイ国内では連動するように民主派が軍政批判のデモ、集会などを展開している。タイ政治は再び流動化の様相を漂わせ始めた。
 タクシン氏、インラック氏の動静が今年に入って初めて報道されたのは「環球時報」など中国の新聞だった。両氏が北京市内に滞在する様子が写真とともに記事となった。この報道が世界の外交関係者を驚かせたのは、タイのプラユット軍政と中国の習近平政権は蜜月関係を維持していると思われていたからだ。
 二〇一四年五月にクーデターでインラック政権を倒して権力の座に就いたプラユット軍政に対しては、日本を除く主要先進国が事実上の制裁を加え、閣僚訪問、援助など外交関係を抑制していた。そこに〝温かい〟手を差し伸べたのが習政権であり、それに恩義を感じたタイ側は中国から潜水・・・