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経済

ルノー「日産併呑」への邪欲

仏政府とゴーンの身勝手な結託

2018年6月号

「事実は全くない。それぞれの会社の自立性があった上で最大限のシナジーを追求している。それを犠牲にすることはあり得ない」
 横浜市内で五月十四日行われた日産自動車の二〇一八年三月期決算会見。西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)はこう言い切り、海外メディアなどが報じた仏ルノーとの合併交渉について真っ向否定した。だが、六月中旬に開催される予定のルノーの株主総会を前に、それでもなお両者の合併観測は燻り続ける。
 背景にあるのは、日産を支配下に置くことで自国の自動車産業の競争力強化や九%台と高い水準にある失業率の改善、さらには税収増に貢献させたいと狙うルノーの筆頭株主・仏政府の強い意向と、自身のルノー会長兼CEO続投と引き換えに合併容認に転じたとされるカルロス・ゴーン(日産会長と三菱自動車会長も兼務)の「変節」(周辺筋)だ。
 仏政府は、かねて発行株の一五%を保有するルノーを通じて日産の経営への関与を強めようとしきりと画策を行ってきた。一四年には株式を二年以上持つ株主に二倍の議決権を与える通称「フロランジュ法」を制定。一時はルノー株を買い増してまで日産との合併を迫・・・