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連載

新・不養生のすすめ 第16話

運動もやり過ぎては毒
大西 睦子

2018年7月号

「認知症の予防に運動しよう」
 よく聞く話だが、具体的にどのくらいどんな運動をすればよいのだろう。
 今年五月、米ハーバード大学の研究者らは米国神経学会誌に、認知機能障害の有無にかかわらず、毎回一時間、六カ月間に少なくとも五十二時間の運動で、高齢者の認知能力が向上することを発表した。また、サイクリング、ランニングなどの有酸素運動、ウォーキングから筋力トレーニング、太極拳やヨガなどの心身の運動に至るまで、ほぼすべてのタイプの運動で認知能力が改善した。つまり、認知能力の向上には「一週間に、たった二時間の好きな運動でよい」という結果だ。
 この研究の方法は、メタ解析といわれる、過去に行われた複数の研究結果を収集・統合し、より信頼性の高い結果を求める統計解析だ。前出研究者らが、運動が認知機能に及ぼす影響について、過去の報告を検索したところ、約四千六百件もの臨床試験が見つかった。 そのうちで、対象六十歳以上、研究のデザインがランダム化比較試験、少なくとも一つの認知症を評価するために神経心理学的検査をしている等の基準を満たした、最終的に九十八件の研究が解析の対象となっ・・・