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社会・文化

嘘だらけ「アンチエイジング」

医師と業者が貪る「七千億円市場」

2018年7月号

 人類にとって不老不死は永遠の夢だ。古くは秦の始皇帝が「東方の三神山」にある霊薬を追い求めて、臣下の徐福を遣わした。現代もグーグルが、その研究に十五億ドルを投下している。日本でも加齢に抗って若さを維持し、不老不死を求める医療「アンチエイジング」の名が人口に膾炙して久しい。 民間調査会社の推計によれば、二〇一七年のアンチエイジング市場は七千八十億円に及び、前年比四・四%増の右肩上がり。しかし、その勢いとは裏腹に、効果に疑問符の付くアンチエイジングの薬や施術も少なくない。虚実ない交ぜの巨大市場に巣食う医師の集まりが、一般社団法人日本抗加齢医学会だ。その幹部には「医は算術」を体現するような面々が名を連ねる。急速な高齢化に比例して拡大するアンチエイジング・ビジネスの深い闇に切り込む。
 プラセンタ注射―。アンチエイジングの施術として有名で、ネットで検索すると、美白や美肌、疲労回復の効用を喧伝する情報が溢れている。プラセンタとはヒト胎盤抽出物で、数社が販売している。日本生物製剤社のプラセンタの商品名「ラエンネック」は一九七四年、当時の厚生省が「慢性肝疾患における肝機能の改善」という効能・・・