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連載

大往生考 第75話

意志をもって迎える最期
佐野 海那斗

2026年3月号

 30年来の付き合いになる同僚の女性医師の父親が他界された。85歳。北海道で飲食店を経営する人だった。人の最期は、その人の来し方を映し出す。この人の逝き方は、その典型だった。
 父親が病を得たのは、約2年前のことだった。膝の腫れと痛みを自覚したのがきっかけだった。病院で精密検査を受けたところ、肉腫と診断された。肉腫は、骨や筋肉などの結合組織から発生する稀な悪性腫瘍である。
 父親の場合、診断時に肺への転移が確認されたため、手術による根治は望めなかった。治療は、抗がん剤と放射線を併用する方針となった。80代の高齢者にとって負担の重い治療だった。それでも父親は現実を受け入れ、弱音も吐かずに治療を続けた。
 幸いにも治療は奏功し、腫瘍は縮小した。膝の腫れや痛みは和らぎ、日常生活への影響は軽減された。父親の発病以降、頻繁に実家へ戻っていた女性医師は、ひととき安堵した。
 それも長くは続かなかった。転機が訪れたのは、昨秋のことだ。数日前から「首が痛い」と訴えていた父親が朝起きると、手足に力が入らなくなった。
 連絡を受けた娘は、東京から北海道へ駆・・・

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