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政治

弱者切り捨ての「人生百年計画」

医療費抑制策に隠された「優生思想」

2018年11月号

 安倍晋三総理が今後三年間での実行を強調する全世代型の社会保障改革で、数多くの施策を貫くのが「健康寿命を延ばし、人生百年元気に働き、医療費も抑制」という三兎を追う思想だ。「ピンピン長生き、最期は病気にもならずコロリと死にたい」のは万人の夢かもしれない。この夢を巡って、大改革を担う主要官庁が「どれくらい効果があるのか」を血眼になって争い始めた現状は世も末と言える。この狂想曲が招くのは、病人や老人を置き去りにした、改革放棄とも言える目先の政治安定しかない。
「人生百年時代の到来は大きなチャンス。全ての世代が安心できる社会保障制度へと今後三年かけて改革を進めます」―。
 臨時国会の所信表明演説で十月二十四日、高らかに宣言した総理が思い描く「全世代型の社会保障制度」とは何か。一つは、これまで高齢者に偏っていた社会保障関連予算を、子供や子育て世代に振り向けることだ。実際に総理肝いりで昨年には消費税の税収の使途見直しが行われ、税率一〇%への引き上げとともに、来年十月には幼児教育・保育の無償化が、再来年四月からは高等教育の一部無償化が始まることになった。
 少子化の中で・・・