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連載

新・不養生のすすめ 第22話

「自然な老い」を受け容れよう
大西 睦子

2019年1月号

 オランダのアーネムに住むエミール・ラッセルバンド(六十九歳)さん。「年齢のせいで、オンラインでデートの相手は見つからないし、就職もできない」と嘆き、二〇一八年十一月にオランダの裁判所で、「(一部の欧米諸国で)合法的に名前や性を変えられるように、年齢を若くすることも許されるべき」と訴えた。
 国際ニュースを通じて、米国でもこの判決が注目される中、一カ月後に裁判所は、「投票、結婚、飲酒、車の運転などたくさんの権利は、法律的に年齢に基づいている。意思で年齢を変えてしまうと、多くの問題が起こる」とラッセルバンドさんの訴えを棄却した。ただし、「二十歳若く感じたり、それに応じて行動することは自由」と助言した。
 法的に年齢を変えられないなら、生物的な年齢を変えるのはどうだろう。ホルモン注射や美容整形などで、シワ取りや筋肉をつける、といったように体の局所を少し修正するのではなく、遺伝子を書き換えて、生物的な時計を止めてしまうということ。世界で最も影響力のある合成生物学者、ハーバード大学医学部ジョージ・チャーチ教授は、マサチューセッツ工科大学(MIT)が発行する、二〇一八年五月の・・・