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社会・文化

新たな社会の脅威「ニュース砂漠」

新聞「消滅地帯」広がる米国の荒涼

2019年3月号

 米国で「ニュース砂漠」が広がっている。日刊から隔週刊まで全米にあった地方新聞が、インターネット化で次々と消えて、ネット・メディアがその穴を全く埋めていないからだ。「米国の民主主義の根幹を揺るがす」との懸念が強まっている。
 メディア研究者のペニー・アバナシー・ノースカロライナ大学教授は、「私が住んでいるところこそ、『ニュース砂漠』だ」と言う。ノースカロライナ州最大の都市シャーロットから自動車で二十~三十分という近郊にあるのに、地区の行政と政治をカバーするメディアが一つもない。
 シャーロットはニューヨークに次ぐ、全米第二の金融都市として栄えている。
 老舗「シャーロット・オブザーバー」紙を筆頭にメディア産業も存在するが、どこも人員削減で、郊外を取材・報道する記者がいなくなった。同紙の場合、二〇〇〇年代前半には記者二百五十人を擁していたのに、今は六十人以下だ。
「二十年前には、三紙の記者が取材を競っていた。今は誰も取材しない。昨年十一月の中間選挙では、集計操作疑惑があって大騒ぎになったのに」と同教授。同州第九区の下院選では、共和、民主両党候補の差・・・