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英EU離脱は「御破算」の様相

首相交代で探る「実質残留」への道

2019年4月号

 英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)騒動が、「大山鳴動して鼠一匹」に向かっている。テリーザ・メイ首相が三月二十七日、離脱協定案可決なら「辞任する」と表明して、超党派で事態鎮静化に動いているのだ。英政治では首相交代を経て、「ブレグジットの死」が近づいている。
 メイ首相の「終わり」は、その瞬間に誰もが悟った。
 三月半ば、国会議事堂(ビッグベン)の保守党院内幹事室に集まった議員たちは、若手幹事のポール・メイナード議員が、メイ首相を前に突然、切れたのを目撃した。首相が「ブレグジットにかたがついたら、次は何をするか」を語っている最中に、メイナード議員が大声を上げた。
「今日ここに来い、と言われて、僕は涙が出た。『あんな女の前に行きたくはない。彼女は裏切り者だ』と思ったのです」と興奮してまくしたてた。首相の眼前で、あまりに無礼な物言いだった。
「そんなふうに感じているなんて残念なことね」と首相が言うと、同議員は涙声で「申し訳ありません。でも、これだけは言わなければいけない。事態はもう我々の手に負えません」と続けた。当選三回、四十三歳の議員が・・・