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政治

最低賃金「全国一律」を阻む官邸官僚

地方創生は名ばかりの安倍政権

2019年5月号

「アイ・ヘイト・コリアン」。この一言で首が飛んだ厚生労働省の課長を世間はせせら笑ったが、同省関係者はこう語る。「彼が推し進めていた全国一律最低賃金は、国民のクオリティオブライフを上げるには有効な戦略だったはず。少なくともこの国の未来図として検討の価値はあった」。そして、それを阻んだのは、またもや首相官邸にはびこる経済産業省出身の官邸官僚たちだったのだ。求心力維持だけが目標と化した安倍政権で、政策の空洞化が進んでいる。

「地方振興に直結する話」なのに

「東京と鹿児島で二百二十四円という大きな差がある。産業別に最低賃金を全国一律にするのはすごく重要な課題だ」。三月七日、自民党の「最低賃金一元化推進議員連盟」のヒアリング。全国一律の最低賃金を目指す平沢勝栄氏の質問に、厚労省の武田康祐賃金課長(当時)は「一気に(東京より水準の低い地方の最低賃金を)引き上げるのは現実的ではないが」と前置きした上で踏み込んだ答弁をし、前向きに検討していく姿勢を表明した。
 産業別、というのは、四月から始まった外国人材の受け入れ・・・