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社会・文化

幻の「馬毛島」 オーナー家の相克

防衛省「失策」で買収はまた頓挫

2019年5月号

 国防の重要拠点をめぐる買収劇は、ついに地権者の骨肉の争いに発展した。米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)の移転候補地として事実上、内定していた鹿児島県の馬毛島。米軍だけでなく、これまで自衛隊基地や核のゴミの最終処分場など、巨大な迷惑施設の確保が難航すると、必ず候補地として浮上しては消える「幻の島」だ。島の所有権を九九%保有するのはタストン・エアポート社。防衛省は同社の社長で、事実上のオーナーとして長年君臨してきた立石勲氏を難敵とみなし、債権者を巻き込んで経営から追放。次男の薫氏を新社長に据えて交渉を進めていた。
 今年一月にはリークを受けてマスコミ各社が「百六十億円で買収合意」と一斉に報道。ついに決着かと思われたが、二月には勲氏が社長に復帰し、薫氏を解任。薫氏が警視庁に父親を告訴するという事態に発展し、交渉は再び長期化、漂流を始めた。
「えっ。いや、そんなはずは……」。今年二月、自ら代表を務めているはずのタストン社の登記に変更がかかったことを知り、薫氏は絶句した。二〇一八年度内の馬毛島売却に向け、防衛省と詰めの折衝をしている中でのことだ・・・