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連載

日本の科学アラカルト 105

新医薬品開発にも寄与する タンパク質構造解析法の研究

2019年5月号

 私たちの身体を構成するタンパク質は体内のさまざまな反応で重要な役割を担っている。そのタンパク質の「かたち」、すなわち構造を知ることは生命の秘密を知ることはもちろん、病気の治療のためにも欠かせない研究だ。ただ、二十種類のアミノ酸が数十~数千個結合した高分子化合物であるタンパク質の構造は極めて複雑だ。しかも、タンパク質の大きさはせいぜい数十ナノメートル以内なので、電子顕微鏡を使ってもその構造は判然としない。
 構造決定のために使われる二つの代表的手段が結晶化とX線構造解析である。「結晶」とは塩の結晶のようにある物質が固まったもの。しかしただ固まればいいのではなく、内部で分子などが規則正しく並んだものが結晶と呼ばれる。
 結晶に対してX線を照射すると、ある特定の方向にだけX線が反射してくる。実際には反射ではなく結晶の格子によって回折という現象が起きたことで、特定方向にだけX線が戻ってきているのだ。どの方向にどれだけのX線が戻るかというのは、結晶やその結晶を構成している物質の構造に大きく依存している。つまり、さまざまな方向からX線を当てて、どのような反射が起きるかをつぶさ・・・

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