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ホルムズ海峡は「波立たず」

イランとの戦争を望む国はない

2019年6月号

 イランと米国の緊張が続く、五月中旬のことである。
 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アビブ・コチャビ軍参謀総長、諜報機関「モサド」のヨッシ・コーエン長官、メイル・ベンシャバト国家安全保障顧問ら、軍と諜報機関のトップを集めて、緊急会議を行った。
 首相の訓示は、「イランとの戦争に絶対に巻き込まれてはいけない」との一点に尽きていた。緊急会議では、イランが、シリアとイラクにいる民兵組織に大量のロケット弾を送ったことや、イランのイスラム革命防衛隊の精鋭部隊、「コッズ」のカセム・ソレイマーニー司令官が、民兵幹部に檄を飛ばしたことが報告された。
 イランの狙いは明らかだ。イスラエルを挑発して、イランとの戦争に誘い込もうとしたのだ。そうすると、準備が整わない米軍は、介入のチャンスを失う。ネタニヤフ首相は「何としてもこの事態を避けろ」と命じた。
 同じ頃、サウジアラビアの首都リヤドでも、慌ただしい動きがあった。サルマン国王が、アラブ諸国の緊急会議開催を決め、アル・ジュベイル外相が記者会見を招集した。
「サウジアラビアは、戦争を望んでいない」・・・