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政治

安倍官邸と馴れ合う 「大メディア」

「日和見報道」が支える長期政権

2019年6月号

 期待値を上げておいて何一つ答えない、失望を買うだけのはずの振る舞いが減点にならないのは、安倍晋三政権の不思議だ。一つの理由は、政権が政策課題を食べ散らかしているのに、実現性を問わぬまま、一つが萎めば別のものに飛びつき、あたかも歴史的偉業が進んでいるかのように報じるメディアの存在だ。有権者の関心は持続せず、失望する間もなく次の話題へと目が向けられる。日露平和条約交渉しかり、日朝首脳会談しかり、衆参両議院の同日選挙も新たな事例として加わるかもしれない。情報操作の巧みさか、メディアの不見識か。いずれにせよ、この状況が政治を劣化させているという自覚は、双方とも乏しい。

「安倍一強」の中での思考停止

 自由民主党総裁として通算四期目を務める目的とは―二〇一八年九月の総裁選で連続三選を果たした安倍の胸の内を、産経新聞の論考は、日露関係の打開と書いた。ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの権威主義政権に対抗して北方領土問題を解決するには、より長く政権の座にとどまる必要があるという論法だ。総裁選の直前、ウラジオストクでプーチ・・・