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中国「スタグフレーション」の苦悶

報復関税合戦で敗色が濃厚に

2019年7月号

 中国経済がスタグフレーションに陥った懸念が深まっている。米中経済戦争による輸出不振と生産拠点の流出、庶民の消費抑制で不況感は募っている。一方、大豆、液化天然ガス(LNG)、電子機器など米国からの輸入品の多くに二五%の関税が課され、昨年来のアフリカ豚コレラで豚肉価格の暴騰も加わり、消費者物価指数(CPI)は五月には二・七%上昇した。インフラ投資など政府の景気対策は効果が薄くなっており、イラン情勢によって原油価格が急騰すれば習近平政権はスタグフレーションを認めざるを得なくなるだろう。
「滞脹」という単語が中国のメディアから姿を消している。「滞脹」とはスタグフレーションの中国語訳。昨年まではトランプ政権の対中攻撃の分析で新聞や雑誌を賑わせていたが、「今は共産党中央宣伝部から使わないように指導がある」(中国のメディア関係者)。
 中国でビジネスマンに人気のあった「华尔街(ウォールストリート)見聞」という世界の経済、ビジネス情報を伝えるウェブメディアが六月十日、中国のインターネットを司る国家互聯網信息弁公室によって突如、閉鎖された。一三年に開設されたサイトで、「海外の経済情・・・