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連載

広告を裏読みする 第9話

交通広告と業界リーダーの「素顔」
本誌編集部

2019年9月号


 電車に乗ると、猫も杓子もスマートフォンの画面とにらめっこするようになって久しい。ふた昔前のように、雑誌や新聞、文庫本などを開く人は少なくなった。その頃は車内の中吊り広告を見て、お目当ての記事の載った雑誌をキオスクで買うという光景もあった。しかし今や週刊誌の中吊りもすっかり減り、継続的に掲出しているのは「週刊文春」「週刊新潮」くらい。駅の売店も次々に撤去されていく中では避けがたい流れだろう。
 今年六月、東西の私鉄の中吊り広告がネットで話題となった。まず大炎上したのは、阪急電鉄が企業ブランディングを手がける会社とタッグを組んだキャンペーン広告。次のような働く人の「声」を中吊りに載せたのだ。
「毎月五十万円もらって毎日生き甲斐のない生活を送るか、三十万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか。 研究機関研究者/八十代」
 この広告の写真とともにネット上には、「三十万円が低所得なのか」「いつの時代か」といった疑問の声が若い世代から次々と上げられた。さらに、他の広告には「私たちの目的は、お金を集めることじゃない。地球上で、・・・