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政治

米国の売却兵器価格「高騰化問題」  防衛装備庁が対策立てるも「中身なし」

2019年9月号公開

 米国の言い値で兵器を売りつけられる、対外有償軍事援助(FMS)調達に関する防衛省の改善策があまりにお粗末だ。
 防衛装備庁がまとめた改善策は、ワシントンに常駐させる職員の中にFMS担当者を増やすことと、米国シンクタンクに防衛省職員を派遣し、価格決定に影響を与える防衛産業関係者との人脈を作ることの二点。しかも駐在員の増員ではなく、FMS調達の任務を、既存の別の駐在員に割り当てるに過ぎない。全体で一桁の人数しかいないワシントン駐在職員のマンパワーでは、FMS調達が劇的に改善されるはずもなく、「アリバイ作りだ」との苦笑いが防衛省内からも漏れる。シンクタンクへの職員派遣の一人あたり予算は年間一千万円。数百億、数千億円の単位で値上がりするFMS調達が改善されるなら、十人程度派遣してもお釣りがくるのに、防衛省は後ろ向きだ。そこには「米国と本気で価格交渉して睨まれるのはごめんだ」という本音がにじむ。(2019.10.9公開)