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経済

企業不正「脱却」の処方箋

ダン・アリエリー (デューク大学教授)

2024年3月号

 ―トヨタグループの一連の不正をどう見ていますか。
 アリエリー
 人間は損得計算をして不正を行うのではない。たとえば、米国で死刑存置州の犯罪率が低いかというと、そうではない。不正は、いわゆる「滑りやすい坂道」論で説明できる。一度悪い行動をすると人はそれを正当化し、次の悪いステップに進むハードルが低くなる。私たちは不正から自己満足と利益を得たいと思っており、それを少しずつ実現できる道を見つけて徐々にエスカレートする。最初の不正はほんの些細なことでも、どんどん坂を滑り落ちてしまう。私がこれまで直接インタビューした人でも、ちょっとした悪事から始めて、最終的に会社を危険にさらした深刻なケースもあった。最後の結末だけを切り取って見ると「なんて酷いことをしたんだ」と思うが、ストレスなどの条件が揃えば、実は誰でもそのステップを踏む可能性がある。トヨタグループで不正に手を染めた社員も例外ではないだろう。

 ―政治家から企業人まで不正だらけですが、なぜでしょう。
 アリエリー
 私たちは、所属して・・・

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