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経済

《クローズ・アップ》横尾敬介(産業革新投資機構新社長)

多難な再出発を託された「B級人材」

2019年11月号

「経営トップとして複数のファンドを立ち上げた経験や、幅広い人脈がある」
 十一月に産業革新投資機構の社長となる横尾敬介氏について、菅原一秀・経済産業大臣(当時)は推薦理由をこう説明した。後に辞任に追い込まれる菅原氏の説明を聞いたみずほ銀行関係者は呆れる。
「トヨタの社長を務めていたから自動運転車開発の経験がある、というくらい無理がある。横尾さんの投資関連の経験なんてたかが知れている」
 高額報酬問題を発端として、田中正明前社長ら機構の役員九人が一斉に辞任したのが昨年十二月。その後任としてようやく決まったのが横尾氏だが、早くもその手腕に疑問符がついているのだ。
 大分県出身の横尾氏は、一九七四年に慶應義塾大学商学部を卒業し、旧日本興業銀行に入行した。大阪支店を皮切りに梅田支店や地方営業部を経て、八二年にニューヨーク支店に転勤となった。ここで約五年間キャリアを積んだが当時を知る元同僚はこう語る。
「証券やインベストメント分野の畑を歩んだが、投資バンカーとしての特筆すべきディールはない」
 その後、帰国し資本市場部やシステム管理部を・・・