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米中「形勢逆転」が招く乱世

貿易戦争は「裏切り」の結末へ

2019年12月号特別リポート

 米中貿易戦争の二年目が、間もなく暮れる。
「中国市場開放」「先進技術盗用の禁止」などの米側の要求に、日本や欧州も当初は成り行きを期待したが、長引く交渉で様相が一変し、今は中国側がどれほど米国産品を買い増すかという、単なる商談に成り下がってしまった。
 中国ではこの間、米国が圧倒的優位を誇るハイテク分野でも、続々と新興企業が誕生している。「独裁国家にイノベーションは生まれない」という定説も、ものかは、ハイテクの「ユニコーン企業」(評価額十億ドル以上の未上場企業)の数では今年、米国を上回った。各種経済指標だけでなく、経済力でも各分野で、「米中逆転」が進む時代を迎えている。

各種指標が示す「逆転」の現実

 実は「米中逆転」は五年前に起きている。
 国際通貨基金(IMF)の統計によると、購買力平価(PPP)でみた国内総生産(GDP)で二〇一四年に、中国が米国を抜いた。購買力平価とは、市場通貨レートではなく、同じものが違う国ごとに、いくらで買えるかを基に算出する。物価の安い国のほうが上位・・・