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WORLD

米国で勃発した「メディア戦争」

「マードック帝国」 VS NYタイムズ

2010年10月号

 米国を代表する高級紙「ニューヨーク(NY)・タイムズ」が、ルパート・マードック氏率いる巨大メディア企業「ニューズ・コーポレーション」に全面戦争を仕掛けた。米国では、新聞が同業種のライバルを攻撃するのはまれだが、タイムズ紙はマードック傘下の新聞が企業ぐるみで違法取材をしていると批判した。マードック帝国は米、欧、アジア、豪の四大陸にまたがるだけに、メディアの戦いは世界規模に広がりそうだ。

ダウ・ジョーンズ社買収が契機


 九月五日の日曜日。分厚いNYタイムズ日曜版のページが、早朝から大西洋の両岸を飛び交った。特集記事が、米国ではなく英政府を激震させるものだったからだ。六千語の力作は、「タブロイド紙の盗聴の余波」と題し、英国最大の日曜紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」の取材実態や同紙の体質を報じた。
 事件は二〇〇六年に発覚し、ワールド紙記者らの有罪判決で決着しているので、簡単におさらいしよう。発端は、王室関係者の携帯電話の留守録音が何者かに聞かれた跡があったことだ。王室は〇五年、警視庁に捜・・・