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経済

日本製薬業の崩壊

外資系の「新薬植民地」に転落

2020年1月号

 史上例を見ない超高齢社会の先頭を行く日本で、医薬品は数少ない成長分野と言っていい。ところが、日本発の製薬企業の競争力は低落の一途を辿っている。医療費の抑制で薬価は低く、開発しても割に合わないからだ。いま医療現場を席巻するのは、欧米の企業が開発したものばかり。日本企業の中には海外へ活路を求める会社も現れた。この国は、海外で開発された高価な医薬品を買わされる「薬の植民地」へ転落していく。
 高齢化に伴う健康への関心の高まりは必定で、相関関係にある製薬業界も成長するのが自然の成り行き。伸び率は年平均六%超の業界にあって、唯一の例外、それが日本だ。二〇一八年度の国内での医療用医薬品の売上高は十兆三千三百七十五億円。前年比一・七%減で二年連続の減少である。四月の診療報酬改定で薬価は〇・九%抑制され、今後もマイナス成長が反転する見込みはない。
 日本で一八年度、最も売れたのは米アッヴィ社のC型肝炎治療薬マヴィレット一千三百二十八億円だった。これに中外製薬の抗がん剤アバスチン一千百七十五億円、小野薬品工業のがん免疫治療薬オプジーボの一千六十三億円と続く。上位十製品のうち、五つは・・・